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企業向け福利厚生設計|単身寮導入時に注意すべき3つの「落とし穴」と対策

変わりゆく社会と企業に求められる住居支援

日本社会は、人口構造の急速な変化や多様な働き方の普及により、大きな転換期を迎えています。
厚生労働省によると、2040年には65歳以上の人口が全人口の約35%となると推計されており、諸外国と比較しても、日本における少子高齢化は顕著で、今後も進行が予測されています。
出典:厚生労働省「我が国の人口について」

このような状況は、労働力不足を深刻化させ、企業の人材確保をより難しくしています。
2024年時点の就業者数は6,957万人と2年連続で増加しているものの、中長期的には人口減少が経済成長を制約する主要な要因となることが予測されています。
出典:総務省統計局「労働力調査(基本集計)2024年平均結果」

こうした社会の変化に対応するため、企業は従業員が安心して働ける環境を整えることが不可欠です。
特に、生活費の中で大きな割合を占める住宅費の補助は、採用力の向上や離職率の低下に直結する重要な福利厚生として再び注目されています。

本コラムでは、企業が単身寮を導入・見直しする際に陥りやすい3つの「落とし穴」を公的統計データや関連法規に基づいて指摘し、その対策を具体的に解説します。
また、2025年以降に施行される住宅関連法改正、省エネ基準義務化、賃貸住宅管理業法の運用強化など、最新の制度改正も織り込み、今後の実務に活かせる視点をご紹介します。

第一の落とし穴:コストだけを重視した寮の選定

1. 従業員の不満を招く「古くて不便な寮」

福利厚生としての寮は、従業員の経済的負担を軽減し、勤務地近くにある場合には通勤の負担を軽くする大きなメリットがあります。しかし、コスト削減のみを優先し、設備が老朽化していたり立地が不便な物件を選んでしまうと、かえって従業員の満足度を下げ、離職につながる可能性があります。
現代の従業員が求める住環境は、単に安ければ良いというわけではなく、仕事と生活のバランスを重視する傾向があります。

対策:従業員の声を反映した寮制度の構築

従業員アンケートなどを通じて、寮に求める設備(家具・家電の有無、インターネット環境、共用スペースなど)や立地に関するニーズを定期的に調査し、その結果を制度に反映させることで、福利厚生としての効果を最大化できます。

快適な寮生活のためには、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジといった家具・家電は必要不可欠です。また、初めての一人暮らしで「寂しさ」を感じる人も多いため、テレビなどの家電が生活の質を保つ上で重要な役割を果たすことがあります。

集合寮では、食堂や娯楽室など、コミュニケーションを促す共用スペースの設置も、従業員の満足度を高める要因となります。寮の管理員がいつでも相談に乗ってくれる体制も、安心感につながります。

2. 賃貸市場の変化と選定基準見直しの必要性

近年、特に都市部では賃貸住宅の家賃が上昇傾向にあります。消費者物価指数(CPI)の「住居」項目によると、2018年の99.2から2024年には103.1へと上昇しており、6年間で約4%の上昇が確認されています。
このような家賃上昇は、企業が従業員に提供する住居支援の重要性をさらに高めています。
出典:e-Stat「2020年基準 消費者物価指数 年報」

さらに、2025年4月からは、すべての新築住宅に対して省エネ基準への適合が義務付けられます。
これにより、建築コストが一時的に増加する可能性はありますが、長期的には光熱費の削減や住宅の資産価値向上といったメリットが期待されています。
出典:国土交通省「建築物省エネ法」

省エネ性能の高い住宅は、環境配慮型経営を重視するESG(環境・社会・ガバナンス)投資の観点からも評価されやすく、企業のブランド価値や社会的信用を高める要素にもなります。
つまり、企業が社員寮や社宅を選定する際には、単に「家賃が安い」ことだけでなく、環境性能や将来的な資産価値、企業イメージへの影響といった多角的な視点を取り入れた選定基準の見直しが求められる時代になっているのです。

対策:新しい視点を取り入れた住宅選定

企業は、賃貸市場の動向を常に把握し、費用面だけではなく、省エネ性能や防災性能、管理体制などの付加価値にも着目して選定することが重要です。これにより、従業員の満足度向上はもちろんのこと、企業の持続可能性や社会的評価の向上にもつながります。

第二の落とし穴:安心・安全な住環境への配慮不足

1. 入居者の不安を招く管理体制の不備

社員寮は、従業員が生活の基盤を築く場であると同時に、企業の信頼性を映す鏡でもあります。管理体制が不十分な場合、入居者間のトラブルや設備不具合への対応が遅れ、従業員の不満や不安を招く原因となります。

企業が適切に対応できる体制を整えていないと、問題が深刻化する恐れがあります。外部委託であっても、企業側が運用状況を把握し、定期的な改善を促す姿勢が求められます。

2. 防犯・プライバシーへの配慮不足

近年、住まいに対する「安心・安全」へのニーズはますます高まっています。特に社員寮のような集合住宅では、プライバシーへの配慮や防犯対策が不十分だと、従業員が不安を感じやすく、長期的な定着につながりにくくなります。
オートロックや防犯カメラ、TVモニター付きインターホンなどの設備は、安心して暮らせる住環境を整える上で基本的な要素です。これらが未整備の寮では、特に女性社員や若手社員にとって心理的な負担が大きくなり、企業への信頼感や満足度の低下につながる可能性があります。

対策:安心して暮らせる環境づくりと運用体制の強化

  • 利用規約の整備と周知
  • 相談窓口の設置
  • 防犯設備の導入
  • 管理会社との連携強化

これらの取り組みにより、従業員が安心して暮らせる環境を整えることができ、寮制度の価値を最大限に引き出すことが可能になります。

第三の落とし穴:目的や運用方針が不明確な寮設計

1. 寮制度の本来の目的が見失われている

社員寮は、従業員の定着支援や企業文化の醸成、さらには採用力の強化といった人材戦略の一環として位置づけられるべき制度です。しかし、制度の目的が曖昧なまま運用されている場合、従業員のニーズとのズレが生じ、制度が十分に機能しないばかりか、逆効果となることもあります。

2. 働き方の変化に対応できない制度

在宅勤務や時短勤務など柔軟な働き方が広がる中、厚生労働省も転勤に関する雇用管理の見直しを推進しています。
出典:厚生労働省「多様な正社員」

制度が働き方にフィットしない場合、従業員のキャリア形成を妨げ、優秀な人材の流出につながる恐れがあります。

対策:目的に応じた戦略的な制度設計と運用

  • 採用力強化:若手社員が安心して暮らせる環境
  • 長期定着:ライフステージに応じた柔軟な住居選択肢
  • 働き方対応:テレワーク設備の整備
  • 満足度調査の実施と制度改善への反映

結論:多角的な視点から設計する住居支援

単に安価な住居を提供するだけでなく、従業員の多様なニーズや生活習慣、さらには法改正の動向を理解した上で、戦略的な制度設計を行うことが、これからの企業には求められます。
企業は、従業員の声を反映させ、専門的な管理体制を整備することで、福利厚生の枠を超えた、持続可能な人材戦略を実現できるでしょう。

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